I-3 食糧増産援助(14億円、1998年交換公文)
I-3-1 事業内容
食糧増産援助は、途上国の食料自給を達成するために、肥料、農薬、農業機械などを供与するもので、1977年度より開始された3。被援助国は資機材を市場で販売することにより発生する内貨の一部を積み立てることになっており(見返り資金)、この資金は被援助国政府が、在外公館を通じて我が国と使途につき協議の上、経済・社会開発に資する事業や物資の調達等に使用することとなっている。
インドネシアでは1977年度より1999年度を除いて毎年食糧増産援助が行われている。その金額は最盛期の80年代半ばには年間20億円台前半に達したが、その後次第に減少し、1998年度には14億円を供与した。
このように食糧増産援助はアジア通貨危機以前からインドネシアでは実施されてきた支援スキームであるが、アジア通貨危機や同時期に発生したエルニーニョによる旱魃の被害を受けて、1998年4月に発表した「総合経済対策」におけるアジア支援では「食糧・医薬品等の支援」として政府米の貸し付け、食糧援助などとともに食糧増産援助が支援策として位置付けられた経緯がある。
現地調査を行ったところ、1998年度までは、被供与物資は貧困対策として農民に無償供与されていた。見返り資金相当額を政府予算内に計上する方法がとられ、見返り資金の口座への積み立ては行われなかった。
食糧増産援助の窓口であるBAPPENASは、事業実施官庁である居住地方インフラ省、移住省、農業省、協同組合・中小企業省に対して、1998年度の食糧増産援助の評価報告書を作成させた。その報告書には供与された農業機械が現在どの程度使用されているか、供与された農業機械、農薬、肥料などがどのように全国に分配されたかが記録されている。
日本政府は、1999年度は見返り資金を口座に積み立てることが困難として、食糧増産援助の実施を見送った。しかし、2000年度より、インドネシア国内の関係者、在インドネシア大使館をメンバーとするステアリング・コミッティを設置し、被供与物資を販売して見返り資金を積み立てることとして、同援助は再開されている。再開にあたっては、高額で実際に農民の購入が困難な農業機械を援助対象から外すなど、見返り資金の積み立てが実施しやすいようにしている。
I-3-2 関係者へのインタビュー
JICAとBAPPENASの関係者に対してインタビューを行った。内容は以下のとおりである。
3 1977年度以前は食糧援助の中にこのような援助も含まれていた。